2005年 第2回定例会 田中優子一般質問  6月9日

※この原稿は質問の元としているもので、実際話したもの(議事録になるもの)とは多少異なる部分があります。

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「指定管理者制度の導入と外郭団体の自立について」

 

「指定管理者制度の導入と外郭団体の自立について」質問致します。

現在、公の施設で導入が図られている「指定管理者制度」ですが、その目的とするところは、国の方針で示されているように、官から民への流れを後押しすることであると考えます

この「指定管理者制度」は、単に施設管理に民間活力を導入できればよいという、行政側の手続きだけの問題ではなく、区民にとっても、区政の新たな流れを大きく実感できる、チャンスであると思います。

しかし役所は、民間活力の導入について、単なる手続きの延長線上でしか捉えていないような気がいたします。

私が考えますに、役所は手続きの固まりのようなところで、それだけで回っているような特殊な世界です。しかし、民間においては、手続きというのは、単に管理部門の一つであり、主役は“営業”と“製造部門”です。


役所には“営業部門”も“製造部門”もありませんから、現在起きている、威勢の良い民間企業のあり方などがはたして実感できるかどうかは、申し訳ないですが、疑問に思います。

「官から民へ」、と言っているのは、住民代表である政治セクターが主であり、行政サイドは実際なかなか腰が重い、ということは否めません。

それは、役所の皆さんにとって、「指定管理者制度」の導入、というと、官の仕事が減ることが思い起こされるからではないでしょうか。「すべき事」とわかっていても、区のOBの姿が目に浮かべば、どうしても、後回しになってしまう・・・ということなのだと思います。

実際、「指定管理者制度」に関して、最大の支障となっているのは、あえて支障、という言い方を致しますが、それは区のOBが所属している外郭団体の存在だと思います。

「後輩が、退職OBの面倒を見るのは当たり前」、という風潮が、今もなお存在し、外郭団体への職員の天下り、が、相変わらず続いています。
このような慣習を持つ「外郭団体」が、区民の利益という観点からみれば、支障となっているのではないか、ということです

行政の仕組みを変えることが容易でないことは、不本意ながら理解しているところです。が、敢えて申し上げますと、区の、公の施設の管理について、外郭団体がなんとなくウロウロしていると、まさにしがらみとはこのことを指すのだと思いますが、そのことだけで、優秀な民間が入って来られない、来るな、という無言の圧力となります。それは同時に、民間の発想が入ってこない、ということでもあります。

この制度の本来の趣旨を実現させるには、一刻も早い外郭団体の自立、それは、とりもなおさず、職員の天下りを断つことも含めた、区からの自立、を意味するのですが、それが前提条件になる、と考えます。

そこで伺いたいのは、「指定管理者制度」の趣旨に沿った公の施設管理ができるのは、一体いつごろからなのか。それは角度を変えれば、区の外郭団体の自立には、あと何年かかるのか、ということと同じことだと思いますが、いかがでしょうか。

 

次に、具体例をひとつ取り上げます。
砧公園にある世田谷美術館の「レストラン・ル・ジャルダン」です。

美術館で芸術鑑賞を楽しみ、その感動にひたりながら、長い廊下を歩き、レストランでフランス料理に舌鼓を打つ。芸術文化と食文化を一度に満たすことのできる、至福のひとときが世田谷区には用意されています。

緑豊かな砧ファミリーパークを背景に持つこのレストランは、単に美術館の付属品ということではなく、美術館と一体化した中に、更なる充実した施設としてレベルアップ、バージョンアップさせるべき時がきていると考えます。

しかしながら、このレストランについては、20年の歳月を経て、多くの区民から、営業時間、メニュー、味、サービスについて、あるいは、駐車場の問題、案内板の整備等々、様々な要望が出されていると聞いております。

そこで、考えていただきたいのが、レストラン「ル・ジャルダン」を、やる気のある民間活力の導入で、いわゆる“行列のできるレストラン”に改造できないのか、ということです。

そのお手本として、「小笠原伯爵邸」というスペイン料理のレストランに、先日、会派メンバーで視察に行ってまいりました。

「小笠原伯爵邸」というのは、東京都の所有ですが、民間企業に貸し出していて、今ではいつも予約がいっぱいの大盛況のレストランです。毎週土日は結婚式でほとんど貸切だそうです。区長、ならびに両助役はご存知でしょうか。

一方、「ル・ジャルダン」は、家賃はタダであるにもかかわらず、経営は現在に至るも、実は赤字だという話を聞いております。評判もいまひとつ・・・です。

ちなみに、「小笠原伯爵邸」は、東京都に家賃をちゃんと払って経営しているそうです。レストランに改修するにあたって、その民間企業が10億円もの先行投資をした上に、家賃も払って営業しているのです。

今や、おいしいところ、ロケーションのいいところ、評判になっているところは、先々まで予約がいっぱいである、とか、行列を作って並ばなければ入れない、というところがたくさんある時代です。

それは決して、交通の便がいいところとは限りません。どんなに不便なところでも、行列はできるのです。

広く公募をすれば、やる気とセンスのある、民間企業がいくらでも手を挙げることでしょう。なんと言っても、家賃タダ、です。いくらでもすばらしい営業ができることと思います。

美術館と一体となって世田谷の注目のスポットとなることが可能な場所を、あのような中途半端な状態のまま何年間も放置しているとは、区民感覚では到底考えられません。

この度の「指定管理者制度」の導入をきっかけとして、意識の高い事業者を選ぶ必要があると考えます。砧公園の景観、文化的財産である美術館、これらの条件で、さらなる充足感を区民が実感できるような、世田谷のブランドが更にアップされるような取り組みに着手すべきです。

改革の方法としては、プロポーザル方式など、競争原理を導入するとか、区長の召集挨拶にもありましたが、「地産地消」で、地場の野菜などを使った料理コンテストやオープンコンペなどを開催し、区民参加でシェフを選ぶ、ということも可能だと思います。
また、例えば、3年契約、5年契約、として、このレストランが有名シェフの登竜門となる、そんな場所にすることも可能ではないでしょうか。アイディアはいくらでもあります。

大事なことは、まずひとつ、やってみること。そして成功例をつくること。成功体験の事実をつくること、です。その積み重ねが、多種多様な事業に渡っている外郭団体のあり方、公共サービスのやり方に、区全体として大きな改善をもたらす可能性を生むのだと思います。

「ル・ジャルダン」の改革は、その成功の条件が揃っている稀有な例だと考えますが、いかがでしょうか?

以上、区の見解を伺いまして、壇上からの質問を終わります。

【再質問・】

「区全体で世田谷のブランドアップを目指している」と、これまで区から何度も聴いておりますが、しかし、区は、本当に世田谷のブランドアップを真剣に考えているのだろうか?と、疑問に感じることがあります。

具体例を申し上げますと、7月に海外姉妹都市のカナダ・ウィニペグ市の「ウィニペグ・シンガーズ」が来る、ということですが、25日に開催される歓迎レセプションは、区民会館の地下食堂、ということなんですね。

どうして、そういう時に、世田谷美術館のレストランを使わないのでしょうか?美術館に案内して、その後で、あのすばらしいロケーションのレストランでレセプションを開催すれば、他の自治体とは違う、世田谷のブランド性、文化的レベルの高さ、などなど、海外姉妹都市の方たちにわかってんもらえて、印象にも残ることと思います。

また別の日のスケジュールを聞いたら、文学館の前にあるチェーン店のレストランで食事、ということです。姉妹都市交流ということを考えたら、チェーンのレストランで食事をするのと、世田谷美術館のレストランで食事をするのとでは、全く意味が違うと思います。美術館はまさしく、文化・国際をつなぐ場所、ではないでしょうか?

世田谷美術館は、世田谷ブランドの発信基地になる!場所です。そして、美術館のレストランは、観光の視点から、世田谷を見せる拠点ともなる場所、だと思います。
それは、区民の財産を有効に生かすことにもつながります。

先程の答弁では、「指定管理者を選ぶ段階で条件をつけることによって、レストランが改革される可能性も十分ありますよ」、ということと理解したのですが、それでよろしいかどうか、今一度確認したいと思います。その一点だけ、お答え下さい。