平成14年10月12日 決算特別委員会 【文教領域での質疑】                                 

 

田中〔優〕 委員 小中学校におけるリプロダクティブ・ヘルス・アンド・ライツの視点からの性教育の必要性ということについて質問いたします。

 今議会でこの言葉が何度か出てきています。なれないと舌をかんでしまいそうな言葉ですけれども、日本語に訳しますと、生と生殖に関する自己決定権と訳されたりするものです。男女が共に生きるせたがやプランの改定についての質問で、水間助役の答弁の中に、このリプロダクティブ・ヘルス・アンド・ライツの視点も盛り込んでという言葉があったかと思いますが、単なる性教育ということではなく、人権教育の一環でもあり、その人個人の一生涯の生き方を自分で責任を持って選択する力をつけるということと、また同時に、他人の人権を侵してはいけないという意味で非常に重要なものだと思います。

  これからの性教育は、このような視点で行われるべきだと考えますが、現在、世田谷区立の中学校で性教育はどのように行われているのかについてお聞かせください。


◎若井田 教育指導課長 中学生の時期は、ちょうど思春期に当たります。異性の尊重、性情報への対処など、性に関する適切な態度や行動について学習することが大切であり、中学校では保健体育の授業で主に学習をしております。

  また、今年度から本格実施になりました総合的な学習の時間に、保健室と連携してエイズや性感染症について授業で取り上げたりしている中学校もふえてきております。ただ、中学校では保健体育や学級活動の授業などで扱うことから、性教育そのものの年間指導計画を立てている学校はまだ少ない現状でございます。今年度は二校でございます。

  しかし、妊娠中絶、出産や避妊などについて助産師を招いて学習を進めたり、養護教諭とのチームティーチングや、外部講師を招いて保健指導として性教育を実施している学校もふえてまいりました。


◆田中〔優〕 委員 ある調査によりますと、十代の妊娠中絶の割合が、三十年前は全人工妊娠中絶の一・九六%だったものが、一九九九年には一〇・四%にも上っているという統計が出ています。また、毎日中学生新聞の記事に、セックスの経験は高校生、大学生の方が多いが、妊娠してしまう可能性は中学生の方が率が高い。義務教育のうちに学校で性についてきちんと教えることが大切という、産婦人科医の指摘が寄せられていました。

  私のところには同世代の親たちからいろいろな情報が入ってきますが、例えば中学生の娘の部屋で見つけた漫画本の内容に驚いた。いかにもかわいらしい少女漫画風の表紙だけれども、その内容、ストーリーはすべて過激な描写でのセックスのこと。中にはレイプや援助交際などゆがんだものも含まれているし、もっと驚いたのは、男の子の喜ばせ方というようなハウツー物もあり、親世代が中学生のときには考えられないようなことが漫画になっているというのです。

  私もどういう本なのか確認してきましたが、あれを中学生が読んでいるとしたら大ショックというのが実感でした。そういう知り合いのお嬢さんたちというのは全く普通の中学生という子どもたちです。男の子向けの性情報の本は、私が中学生だった三十年前から既にありましたから、言わずもがなという状況だと思います。

  指導課長に伺いますが、このような漫画の本をごらんになったことがおありでしょうか。


◎若井田 教育指導課長 残念ながら、おっしゃられた本は読んだことはございません。


◆田中〔優〕 委員 指導課の先生方、指導課長を初め、中学生が実際に目にしている、手にしているという漫画の本なんですが、内容を研究してくれとは申しませんが、ぜひ一度ごらんになっていただくと、どういうものなのかわかると思いますので、ぜひこういう情報が中学生たちにも届いているんだということを知っていただきたいと思います。

  そして、財団法人日本母子衛生研究会というところが出した「中学生のためのラブ&ボディBOOK」という性教育の冊子があります。ご存じかと思いますが、こういう冊子ですね。この本なんですけれども、こういうものです。これについては、反対する国会議員の意見が少し前に新聞紙上にも出ていましたけれども、現在では廃止、回収となってしまっています。

  けれども、私は実際、中を見てみまして、非常によくできている冊子だと思います。第二次性徴に始まり、性を全般的にとらえていて、好きな人ができたら自分も相手も大切にできることを学ぶ、特に女性は妊娠、出産という機能があるので、生涯にわたっての体の健康を考える必要があるということも含まれた内容で、正しい知識を人権教育の視点から述べています。こういうものが使えなくなるということは、本当に非常に残念なことだと思います。

  寝た子を起こすなと言う人がいますが、寝ているはずだ、寝ていてほしいという大人の願いに反して、子どもたちは外部からおもしろおかしく入ってくる性情報にさらされています。この現状をしっかりと認識して、中学校でのリプロダクティブ・ヘルス・アンド・ライツの学習の推進を図るべきではないでしょうか。
 何年か前に私の子どもが通っている小学校で、性について語る、学ぶという家庭教育学級が開かれました。参加者が部屋に入り切れないくらいの大盛況で、親世代が、いかに性について学んでこなかったかということを実感いたしました。そういう意味では、親教育も必要ではないかと思います。そして、家庭で親子でオープンに性の話ができるような雰囲気をつくれたら一番いいのではないかと思います。

  先ほど説明がありましたが、中学校では性教育を、学校の先生方、特に保健体育の時間などの活用でやっているということですが、これには大変限界があると思います。私自身も保健体育科の中学校の教員をしていた経験がございますが、性教育については非常につらいものを感じていたという経験がございます。そうではなくて、専門的な知識を正しく伝えられる力量を持っている、そういう保健師さん、助産師さん等、先ほどは二校で取り組んだというお話がありましたけれども、そういう専門家に来てもらって、各学校で取り組む必要性があると考えます。

  リプロダクティブ・ヘルス・アンド・ライツの視点での性教育の必要性について、教育委員会としてはどのようにお考えか、見解を伺います。


◎若井田 教育指導課長 委員がおっしゃいますように、従来のテレビ、雑誌などにあふれる性情報に加えまして、現代は携帯電話、そしてメールなどの普及で、子どもたちが性に関する情報に触れる機会はぐっとふえております。それらの情報の中にある不適切な情報を見分け、相互に尊敬し合う対等な男女関係を促進し、自分の行動に責任を持って対処できるという、人権教育の視点から性教育を推進していくことは、ご指摘のとおり大切であると考えております。

  リプロダクティブヘルスの理念は、まだ日本においては必ずしも定着していない概念ではありますが、二十一世紀の男女共同参画社会の実現、生涯を通じた女性の健康の保持増進にとっては、極めて重要な概念であると認識しております。
 学校教育におきましても、指導方法を確立し、保護者の理解を図り、性教育を含めた健康教育に積極的に取り組むよう指導、助言いたします。


◆田中〔優〕 委員 ぜひ今のご答弁のとおり積極的に、しかも専門家の力をかりながら、学校教育でも系統立てて取り組んでいただくよう、指導をお願いしたいと思います。