世田谷区立松沢中学校 第3回家庭教育学級                  2004,1,20


    「家庭で、親子で、性の話をしませんか」        
〜思春期真っ盛りの中学生の性教育について考える〜
                       世田谷区出張専門開業助産師
                              性と健康を考える女性専門家の会    
                                  助産師 吉田敦子

 

 

ふだんからの親と子の会話が、責任ある性行動につながっている
      「男女の生活と意識に関する調査2002」(厚生労働科学研究より)
 
   *性に関した会話は親子ではほとんどないが、
日常的な会話が多く交わされている家庭では子どもの性行動がより慎重になっている


−初回性交の時期、避妊実行の割合、繰り返される中絶において、有意な差が出ている
親への負のイメージが、初回性交年齢を早めている
*子ども達は「中学卒業までにしっかりした性の知識を持っていたい」と考えている

 


      1. 性教育の4つの年齢ステージ


       (1) 就学前      ― 魔法がかった考えをする       
          (性器の名前、精子と卵子が性交により合体して赤ちゃんができる
             赤ちゃんは膣を通って生まれてくる)


       (2) 小学校低学年   ― トイレにまつわる話がすき
          (消化器系統と生殖器系統の違い、月経と精通、思春期の体の変化)

       (3) 小学校高学年   ― なんでも気持ち悪がる
          (性感染症の基礎的な知識、ポルノの見方、早くセックスをしなくてもいいこと)


       (4) 中学校、高等学校 ― 無知なのを知らない
          (避妊についての具体的な知識、性感染症の予防方法、
            よい関係の持ちかた、上手な断りかた、医療との関わりかた)
       

  
      2. 具体的な相談事例から・・・体と心の変化の理解のために


       男子 (1) 包茎    真性包茎と仮性包茎の違い
                 高校生の7〜8割は仮性包茎
                 仮性包茎は自然な姿
                 仮性包茎は手術の必要なし
                 剥いて洗って戻す
                 「かぶればホーケー、剥ければオーケー」

          (2) マスターベーション 身体的にも精神的にも害はない
                 頻度には個人差が大きい
                 満足するまでやってもいい
                 今やるべきことは何か
                 MASだけが思い出というのでは寂しくないか

          (3) 性器の大きさ 性器の大きさと男の価値、SEXの善し悪しは無関係
                 ペニスの長さは勃起時に4センチあれば十分
                  15歳過ぎても2次性徴がなければ専門医に


       女子 (1) 月経異常

月経指導の4か条
 1. 15歳になっても初経がなければ専門家に相談
 2. 月経周期は25〜38日が正常の目安
 3. 3ヶ月以上の無月経を放置しない
 4. 月経が8日以上続く時は受診

            月経痛は我慢しないー痛みの始まる前に服薬する
            月経前後の不快症状は受診(PMSなど)

          (2) 妊娠     最終月経の確認
                   性交の時期、避妊法
                   市販の妊娠判定薬を使うよりも受診をすすめる
                * 緊急避妊について*
                   危ない性交から72時間以内に、内服法
                          5日以内に、IUD挿入
                   72時間以前の性交での妊娠は防げない
                   性感染症の危険は減らせない
                   排卵を遅れさせることがあるー事後の性交に注意

          (3) 病気     帯下の異常、外陰部の掻痒感、異常出血,性感染症不安
                   婦人科受診が原則
                   パートナーとともに受診することも必要


                治療中の性行為について
        * 性器自己検診についてー自分の体を自分で知っておくことはとても大切なこと*

 
      3.性感染症について


          性感染症とは?   知っているものは?
          予防方法は? 

   
      4.SEXについて


          性の  1.生殖性  2.快楽性  3.連帯性について
          SEXのリスク  望まない妊娠と性感染症
          性の自己決定について 自己責任について
          SEXの免許 ー 避妊の知識と技術、性感染症予防


        中学生だから高校生だから、だめ、大人になるまで結婚するまで、だめ、ではなくて、
        セックスのリスクを回避する知識とそれを実行する経済力ができるまで。
        それでも失敗することはあるのだから、自分と相手の心と体が傷つかないですむ方法が
        実行できる生活状況になるまで。
        この相手となら生死にかかわる病気を共有しても悔いがないと思える相手に出会うまで
        自分の要求を相手に適切に伝えられるコミュニケーションスキルも大切


     5.妊娠中絶について


         最終的には選択肢の一つ
         経験にマイナスなしの気持ちで、繰り返すことのない様、今後に生かそう



     6.性同一性障害    異常ではない、仲間の紹介 
                 孤立の危険、あるがままを認める

     7.子ども達を取り囲む情報について


        インターネット、携帯サイト、AV、コミック、

 

    私の考える性教育の目標―性は人生においてかけがえのない健康の一分野


     「自分や相手の体をよく知り、自分の心と体と相手の心と体を傷つけない性行動ができる」
     「セックスはコミュニケーション」

 

 

<参考資料>
「望まない妊娠、人工妊娠中絶を防止するための効果的否認教育プログラムの開発に関する研究」
                             平成14年度厚生労働科学研究

「男女の生活と意識に関する調査」(平成14年11月実施16歳〜49歳男女3000人)


*性行動を規定するもの
    ・中学生くらいまで親とよく話した、時々話した  男性87.0%  女性91.5% 
    ・親と性に関する話をよくした、時々した     男性7.0%  女性10.7%
    
    ☆出会ってから1ヶ月未満でセックスをした  男性全体       35.7%
                      親とよく話をした男性    32.2%
                      時々話した男性       34%
                      ほとんど話をしなかった男性 52.4%
                      全く話をしなかった男性   62.5%


    ・人工妊娠中絶の経験がある                   17.2%
    ・2回以上人工妊娠中絶の経験がある           そのうちの33.0%
                     (内訳)
                      親とよく話をした女性    29.3%
                      時々話した女性       35.6%
                      ほとんど話をしなかった女性 41.2%
                      全く話をしなかった女性   100%

 

A18歳未満でセックスを開始した
B18歳以上でセックスを開始した

 (女性)

   
母親に対する評価が低い
33.8%
20.8% 
父親に対する評価が低い
29.6%
22.7% 
セックス開始年齢は本人の自由
62.5%
29.6% 
身近な人と性の話をよくする
17.2%
5.3% 
この1年間避妊をしないことが多い
50.0%
32.6% 

                

     
     

 

 (男性)    
セックス開始年齢は本人の自由
74.6%
35.5% 
身近な人と性の話をよくする
24.6%
7.7% 
親は性的なことに関して厳しくなかった
32.6%
22.2% 
この1年間避妊をしないことが多い
57.9%
34.0%