[今日のノート] 52分授業 (読売・大阪版 2004/01/29朝刊)


◆締め切り時間に追われる仕事をしてきた。おかげで、一分、二分の短い時間の大切さが体に染み込んでいる。


◆だから、東京都世田谷区教委が、新年度から区立中学校で導入しようとしている「五十二分授業」には、引かれるものがある。


◆通常五十分間の授業時間を一律二分間、延長するものだ。一時間目の開始を早めたり、休み時間を削ったりする工夫で、延長分を生み出し、放課後のクラブ活動などへの影響は防ぐ。


◆たかが、二分と言うなかれ。一年間、積み重ねれば五十分授業にして三十九時間分が増えることになる。


◆学力低下問題が深刻なだけに、学校週五日制の完全実施で消えた授業時間の確保に、学校現場は躍起だ。


◆二学期制にして始、終業式や期末試験を減らしたり夏休みや春休みを短縮したりする学校が現れている。その中で五十二分授業の試みに注目するのは、先生も生徒も、授業時間について考え直すきっかけになるからだ。


◆遅刻しても平気で教室に入る先生もいれば、終了のチャイムが鳴り、生徒の集中力が薄れているのに授業を続ける先生もいる。


◆最初の五分間で生徒をどう引きつけ、最後の五分間をどうまとめあげるか。プロの教師として、きちんとした計画を持っていれば、五十分授業でも効果が上がるのは、当然のことだ。


二分は結構長い。五十二分授業導入の半年先でも一年先でもいい。延長をどう生かし、何が変わったか。世田谷からの報告を聞いてみたい。

   (井手 裕彦)